伊予三島簡易裁判所 事件番号不詳 判決
主文
被告人を懲役六月に処する
但し、本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する
訴訟費用は全部被告人の負担とする
理由
被告人は昭和二十八年十二月二十五日午後十一時頃愛媛県川之江市妻鳥町一、三七〇番地篠原光利方前国道路上に置いてあつた当時会社更生法による更生会社なる高倉製紙株式会社の所有にして同会社管財人国方昇外二名管理にかかる愛媛第一―二二一六号普通貨物自動車一台(時価七十万円相当)を窃取したものである
(証拠説明は省略する。)
法律に照すと被告人の判示所為は刑法第二百三十五条に該当するので所定刑期範囲内において被告人を懲役六月に量刑処断すべく旨諸般の情況を考慮し執行猶予を相当と認め同法第二十五条第一項に則り本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予し訴訟費用の負担については刑事訴訟法第百八十一条第一項本文を適用して全部被告人に負担せしむることとする
弁護人は(一)被告人が本件普通貨物自動車を持ち帰つたときは自己の物であると信じていたので不正領得の意思はなかつた(二)本件自動車が右会社の所有であつたとしても被告人は自己の所有であると信じて持ち帰つたのであるから犯意に錯誤がある
(三)次に被告人所有の自動車を右会社側において他人に使用せしめる等不正に被告人の権利を侵害し事態急迫を告げたので防衛のため已むなく持ち帰つたのであるから正当防衛である
(四)本件のような事案において普通人たる被告人には適法行為に出ずることができたであらうと期待することは不可能であつたのであるから期待可能性がない
と各主張するけれども前段証拠により認定した通りで孰れも犯罪の成立を阻却するに足らないと認められるから弁護人の右各主張は採用するわけにはゆかない
仍て主文の通り判決する(昭和三〇年八月二六日伊予三島簡易裁判所)